決断
私は人生で一度だけ、大きな決断をしたことがある。
高校三年生の4月、
私は今まで目指していた医者という道をやめて、看護師志望にした。
その理由は、当時所属していた吹奏楽部で、夏のコンクールに出場したいからであった。
進路別のクラス分けも決まっていた。
高いお金を払って塾にも通っていた。
全てをやめて、私は両親に土下座して部活をやらせてくださいと頼んだ。
日本人には吹奏楽部員がとても多いので、この気持ちがわかる人は多いと思う。夏のコンクールは、いつも遠い夢であり、希望であり、挑戦であった。
汗がスーッと引いてくようなあのホールの冷房
部員全員でゴールド金賞を誓い合ったリハーサール室
先生と1人1人握手した舞台裏
先生が指揮台に上がまた瞬間ライトがひかり、もう先生しか、仲間しか見えないあの舞台
最後の音がホールに響き渡るあのかんじ
演奏後のあっつい外で食べたアイス
結果発表までソワソワして他の団体を聞いたこと
講評がいつもやたら褒められて自信なくすこと
会場全員でゴールド金賞を願うあの瞬間
はち切れんばかりの歓喜の声と涙
幸せすぎたあの夏休み
高校三年生の夏、毎日5:00に起き23時に帰る生活をしていたのにあの頃の日記には毎日、幸せすぎると書いてある。
そして、いま、全てを忘れたかと思っていたけど、なんでかいまでも鮮明に思い出せる。いまでも涙が溢れてしまう。
私は吹奏楽が大好きだった。
あのときの決断は間違っていなかった。
思い出して泣けるような宝物が私にはある。
それが嬉しくてたまらない。